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松本清張の『ゼロの焦点』は2009年に映画化され、数ヶ月前にはテレビでも放映されたので、ご覧になった方も多いのではないでしょうか。ごく小さな事件を発端として、昭和30年代という、新しい時代に変わりつつありながら戦争の傷跡が残っていた日本の姿がリアルに再現されており、なかなか楽しめました。 そのラストシーンで、広末涼子演じる主人公の鵜原禎子が、手紙を焼く場面が登場します。 この手紙、結婚して一週間後に金沢で消息を絶った夫、鵜原憲一から、最後に禎子に送られたものです。手紙の本文は映画の中盤で登場し、謎解きのポイントにもなっているのですが、封筒が画面に登場するのはこのラストシーンが最初です。 古い時代の手紙を見慣れている人は、あれ?と疑問に思われるでしょう。切手の部分を拡大してみましょう。 貼られているのは、昭和28年7月10日に発行された、法隆寺金堂の壁画の観音菩薩をデザインした10円切手。昭和26年11月1日に封書料金が8円から10円となり、昭和41年7月1日に料金改正が行なわれるまでは封書10円時代が続きました。手紙の消印の日付は昭和32年10月7日、金澤という局名も読み取れます。夫が帰宅するはずだった10月8日の前日の日付となっており、切手、料金ともに時代には合っています。 不思議なのは消印。上部に波型の抹消部分があることから機械印と思われますが、日付部分は、いわゆる櫛型印。下半分だけであれば、一般的に使われていた手押しの櫛型印として何の違和感もないのですが、機械印の波型部分と手押しの櫛型印の二つを組み合わせたことで、現実にはちょっと見かけない消印となってしまっています。 私は昭和30年代を知らない世代なので、もしかすると手紙以外にも違和感のある部分があるかもしれませんが、こうしてストーリーを楽しむと同時に、時代考証についていろいろ考えてみるのも、映画の楽しみの一つかと思います。 |
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