樋口一葉と「たけくらべの美登利」

今年10月7日に発行された3種類の国際文通週間切手には、女性を題材にした日本画が選ばれました。

国際文通を意図した発行ですので、切手の額面は海外向けの封書料金が基本になっています。
すなわち、90円は第1地帯(アジア)あて、110円は第2地帯(オセアニア、中近東、北中米、ヨーロッパ)、130円は第3地帯(アフリカ、南米)あての25グラムの封書料金です。

そのうちの130円切手には、樋口一葉の代表作『たけくらべ』の主人公である美登利(みどり)を題材とした絵が選ばれました。

作者は鏑木清方。清方の絵は何度か切手になっていますが、1981年11月27日に発行された近代美術シリーズ第11集に採用された清方の絵も、一葉をテーマにしたものでした。

せっかくなので、台東区の一葉記念館まで足をのばし、そばにある台東竜泉局の風景印を押印してきました。

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本来であれば、一葉の命日である11月23日の日付で押印したかったのですが、この日は毎年祝日にあたり、郵便局はお休みです。以前は、一葉祭にあわせて11月23日も押印サービスを実施していたそうですが、局の方に伺うと、今年は23日は開局していなかったとか。

さて、切手に描かれた美登利は、水仙の花を持っていますが、これは『たけくらべ』のラストに登場する印象的なシーンから着想を得たものです。

「龍華寺の信如が我が宗の修業の庭に立出る風説をも美登利は絶えて聞かざりき、有し意地をば其まゝに封じ込めて、此處しばらくの怪しの現象に我れを我れとも思はれず、唯何事も恥かしうのみ有けるに、或る霜の朝水仙の作り花を格子門の外よりさし入れ置きし者の有けり、誰れの仕業と知るよし無けれど、美登利は何ゆゑとなく懷かしき思ひにて違ひ棚の一輪ざしに入れて淋しく清き姿をめでけるが、聞くともなしに傳へ聞く其明けの日は信如が何がしの學林に袖の色かへぬべき當日なりしとぞ。」(『たけくらべ』末尾より)

幼なじみの真如が修行のために遠くへ旅立つその日、美登利の家の格子戸に、造花の水仙が差し入れてあった、というこのラストシーン、よく読むと、真如が差し入れた、とはっきり書かれていないところがまた絶妙で、真如の存在が美登利にとって幻のように遠い存在になりつつある事実がおのずと伝わってきます。

現代に置き換えてみれば、密かに想いを寄せていた人が何の前触れもなく転校してしまい、その引越しの日に密かに自宅を訪ねてきた、といったところでしょうか。『たけくらべ』を読んで、自分にとって遠い存在になってしまった幼なじみなどをふと想い出したりしてみるのも、一葉文学の楽しみ方の一つかもしれません。

竜泉局の風景印にも、一葉の肖像と一葉記念館とともに、水仙の花がしっかり描かれていますが、作品を読むとまた風景印も違って見えてくるのではないでしょうか。

ところで、一葉記念館の最寄り駅である地下鉄三ノ輪橋駅では、一時期、記念スタンプを置いていました。何かのキャンペーンで、都内の地下鉄の各駅に設置されていたような記憶もありますが、そのスタンプだけを押した封筒が手元にあったので、今回はそれを使って記念カバーを作成してみました。

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また、130円切手2枚と110円切手1枚を加えると350円となり、国内の定型速達便の料金(封書80円+速達270円)にぴったりあいますので、実逓便も作ってみました。

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文学ファンとしては、文学をテーマとしたこのような切手が一つでも増えるのは嬉しいものです。

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