「紫煙と文士たち~林忠彦写真展」を見てきました

渋谷の「たばこと塩の博物館」で開催中の「紫煙と文士たち~林忠彦写真展」を見てきました。

林忠彦といえば、太宰治や阪口安吾など無頼派作家のポートレートで有名ですが、その多くの写真にタバコが写しこまれていることに注目し、タバコを持つ文士をテーマに構成したのが今回の企画です。

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写真展の看板に使われているのは、昭和21年に銀座のバー・ルパンで撮影された太宰治のポートレート。林忠彦の代表作とも言われている一枚です。博物館入口のテラスには、モノクロ写真と対照的な鮮やかなピンクの椅子が並んでいました。

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企画展示は博物館の4階で開催されていました。取り上げられた作家は総勢59名。展示スペースはそれほど広くはない画廊といった趣で、大きく引き伸ばされた写真を一枚一枚じっくりと眺めるには展示品の数もちょうどよい分量でした。

展示スペースの入口には、太宰治のポートレートが拡大されて掲げられていました。

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太宰の写真の前には、バーの椅子を模した丸椅子が置かれており、「こちらの太宰治と椅子の場所に限り、撮影いただけます。」の表示。写真展ならではの、太宰と並んで記念撮影ができるという洒落た気遣いですね。

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展示された写真を改めてよく見ると、織田作之助、太宰治、阪口安吾、川端康成、志賀直哉、井伏鱒二、吉川英次、司馬遼太郎など、林忠彦がファインダーごしにとらえた作家はことごとく手に煙草を挟んでいます。モノ書きという職業は煙草と縁が深いのでしょうか。

考えてみれば、ペンが進まないときに一服して気持ちを落ち着かせるというパターンは、作家に限らず、頭を使う現場ではよくある状況かもしれません。

各写真には、その作家に対する林忠彦の言葉も掲げられており、一枚の写真をモノにするためには長い年月がかかっていることが伺えました。例えば、川端康成。無口で鷹のような鋭い眼光の川端に、若い頃はとてもそばに寄れず、ロングショットしか撮影できなかったそうです。次第に親しくなって、ついに川端がノーベル賞を受賞した直後にワイドで50センチまで近づき、鷹のような目がキラっと光った瞬間をとらえたときに「これで決まった」と思ったとか。この一枚に40年かかったと林自身が書いています。

ところで、煙草を吸っている姿というのは、いわゆるかしこまった肖像写真ではく、作家にとっては限りなく日常に近い瞬間とも言えるでしょう。そのような一コマをまとめて眺めることができるこのような企画は、原稿や書簡の展示とはまた違った面で作家のリアリティを感じることができ、興味深いものでした。


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