タイタニック号沈没から100年(1)悲劇を伝えるイギリスとカナダの切手

私が中学生だった頃、今からもう20年以上前の話ですが、英語の教科書にタイタニック号の悲劇をテーマとした教材がとりあげられていました。

沈みゆくタイタニック号から一斉に避難する乗客たち。その中に、救命ボートが足りないために引き裂かれそうになる母子の姿。とある若い女性が、その母親の身代わりとなって救命ボートから船に戻り、母子は無事救助され、その女性は船とともに犠牲となった、という、数ある悲劇の一つですが、タイタニックと聞いて私がまず思い出すのは、このエピソードです。

さて、そのタイタニック号が沈没したのは、1912年4月15日。今年はちょうど100年にあたります。それを記念する切手が世界各国から発行されていますので、いくつか紹介したいと思います。

1911年5月31日、タイタニック号の公式な進水式が北アイルランドのベルファストで行われ、その後港内で10ヶ月もかけて内装や機器の据付が行われました。1912年4月2日、正式にホワイトスターライン社に引き渡されたこの豪華客船は、イギリスのサウザンプトン港へ向かいます。そして1912年4月10日、2,200名を超える乗員乗客を乗せ、サウザンプトン港からニューヨークへ向けて処女航海に出航しました。

当然、イギリスからも切手が発行されているのかと思いきや、正式な記念切手は発売されておらず、下に紹介するようなPスタンプが、処女航海出発からちょうど100年目の2012年4月10日に売り出されました。

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このPスタンプには、赤い封蝋の図案の切手が10枚、そして各切手のタブ部分に、建造中のタイタニックやタイタニック号の宣伝用ポスター、沈没を伝える「ニューヨークタイムズ」の紙面、沈み行くタイタニック号などの写真がデザインされています。このシート地の左上には王冠が見えますが、これは「Royal Mail」、すなわち英国郵政のマークです。

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実は、タイタニック号の正式名称は「RMS TITANIC」。RMSはRoyal Mail Shipの略です。タイタニックは、豪華客船であるとともに、英国郵政の郵便船として、郵便物の運搬手段としての使命を負っていたのですね。

Pスタンプの上部には、タイタニックを所有していた船舶会社「WHITE STAR LINE」の社名とともに、赤字に白い星をデザインした同社の社旗が配されていますが、その下に「ROYAL MAIL SHIP」の文字が見えます。

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航空機が初めて大西洋を横断したのは1919年と言われていますから、タイタニックが処女航海に出発した1912年当時は、欧州と北米間の郵便物はすべて船舶を使って運ばれていたことになります。タイタニック号には二つの船内郵便局があり、2名の英国郵政職員と3名の米国郵政職員が乗船して郵便物の仕分け作業に従事していました。処女航海時、タイタニックには3,364個もの郵袋(郵便物を入れた袋)が積み込まれていたといいます。5人の職員は惨事が発生した際、喫水線の下にあった郵便室から上方の郵便局へと郵袋を運び出そうとしたそうですが、結局5名とも命を落としました。郵便物も船とともに沈んでしまいましたが、奇跡的に残されたいくつかの郵便物がオークションに登場して話題となったこともありました。

もうひとつ、2012年4月5日にカナダから発行された切手を紹介しましょう。

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切手四枚にわたって、タイタニック号の船尾が後方から見上げるようにデザインされています。巨大な三つのスクリューが印象的です。よく見ると、下に人物も描かれており、船体の巨大さがよくわかる図案となっています。各切手に見える赤い旗は、上述のホワイトスターライン社の社旗です。

上の二枚の切手には背景に地図が描かれており、右側には出航地であるイギリスのサウザンプトン(Southampton)、左にはカナダノバスコシア州のハリファックス(Halifax)の位置が示されています。ハリファックスはタイタニック号の沈没地点から比較的近かったため、事故の犠牲者の多くはここに運ばれてきました。市内にある3つの墓地に、今も150名のタイタニック号の犠牲者が眠っているということですから、カナダからTITANIC号の切手が発行されるのは意義深いことですね。

切手の左側の耳紙には8色のカラーマークが見えますが、ホワイトスターライン社の社旗の形をしているところが、なかなか洒落ています。

また、一見額面が表示されておらず、切手の右下に「P」とだけ表示されているのが気になります。

この「P」はPermanentの頭文字で、郵便料金が値上がりしても国内向けの郵便料金として永久に使えることを表しています。このような切手をカナダではpermanent stampと呼んでいます。

最近、カナダ国内の郵便料金は毎年のように値上がりしており、値上がり前の切手を使うときには差額分の小額切手を貼り足さなければなりませんでした。その煩雑さを避けるために、現在、カナダの切手は記念切手も含め、多くがこのpermanentになっているので、郵便料金が値上げされる前に買いだめしておくとちょっとだけお得、ということになります。

この切手、シートで購入したのですが、シート全体はこの田型を四つ並べ、中央に大きく「TITANIC」の文字を配置してあり、なかなか迫力があります。

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ところで、このブログの冒頭にあげたエピソードは「Miss Evans on the Titanic(タイタニック号上のエバンズ嬢)」というものですが、その本文は、20年以上経った今でもほとんど覚えています。これには理由があって、当時、中学生を対象とした英語暗唱大会なるイベントがあり、その課題文がこの物語だったのです。テープを何度も聴きながら苦労して全文を暗記したことを今でも覚えています。私はなぜか中学校の代表に選ばれてしまい、全道大会に出場したことも、今では良い思い出となっています。

次回も、各国から発行されたTITANICの切手を紹介したいと思います。

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