実は三箇所あった高浜虚子の旧居跡

前回のブログで紹介した、鎌倉由比ガ浜の虚子庵跡ですが、実は、虚子は50年間同じ場所に住んでいたわけではなく、二回引越しをしていることがわかりました。

虚子が鎌倉に移ったのは、明治43年。子供が病弱であったため、また、國民新聞社に入ってしばらく離れていた句誌「ホトトギス」を立て直すべく、気分を一新するために、鎌倉に移り住むことにした、と自伝で語っています。

昭和62年5月に鎌倉文学館で開催された「特別展 高浜虚子展」の目録を古書店にて入手したところ、その中に虚子庵についての紹介ページがあり、虚子が住んだ住所が三箇所、地図とともに掲載されていました。

容易に入手できる文献ではないと思いますので、ここに改めてその地図をもとに作成した図版をあげておきます。

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地図の中で①②③で示した場所が、虚子が住んだ場所になります。それぞれの当時の住居表示と現在の住居表示をあげておきます。いずれも、当時の住所は、通称「原の台」と呼ばれていました。

①明治43年12月~居住
当時の住居表示:鎌倉町乱橋材木座1226,1278番地 小林米珂別荘内貸家
現在の住居表示:鎌倉市由比ガ浜3-7

この貸家の大家さんは、小林米珂という日本名の、デ・ベッカーというイギリス人でした。日本に帰化し、日本人の奥さんをもっていました。マリ、イーデス、アーネスト、エリクという四人の子供があり、虚子の娘であった星野立子さんは、この子供たちと一緒に遊んだ記憶があると回想しています。ベッカー一家は、自身は大きな洋館に住み、1号から9号までの貸家を持っていて、虚子が借りたのはその4号でした。


②大正2年9月~居住
当時の住居表示:鎌倉町大町258番地 鎌倉別荘内
現在の住居表示:鎌倉市由比ガ浜3-9-10

③大正6年9月~居住
当時の住居表示:鎌倉町乱橋材木座1278番地
現在の住居表示:鎌倉市由比ガ浜3-8-26

③は、①の家宅をそのまま江ノ電の軌道越しに移築し、買い取ったものです。句碑の解説板によると、移築はベッカー氏の手で行われ、虚子が無理やり買わされた、といったことが書かれていました。それはともかく、それまで貸家暮らしだった虚子にとって、この家が初めての自身の住居となりました。

地図中、写真Aで示した方向から撮影したのが下の写真です。ここが、虚子が最晩年をすごした住居があった場所と思われます。

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地図中、写真Bで示した、踏切の反対側から撮影したのが下の写真です。遮断機のむこうに小さく、句碑が見えます。

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①②の場所も同様に一般の住宅地ですが、虚子が暮らした時代の面影をさぐるのは困難です。

ただ、この周辺一帯は至って静かな町並みで、江ノ電のレールのきしみと踏み切りの警報音が時折響くだけで、住居が増えて道路が舗装された点以外は、虚子が暮らしていた頃と、さほど変わっていないのかもしれません。

旧居跡の句碑「波音の由比ケ浜より初電車」のそばぎりぎりを、江ノ電が走り抜けて行きます。句碑とその解説板の写真もあわせて紹介します。

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この句は、大正15年刊行の虚子の句集「五百句時代」に収められていますので、時代的には③の住居で詠んだものと推察されます。

観光の表舞台として歴史のある古刹がひしめく鎌倉ですが、こうした裏通りの文学散歩も、また楽しいものです。


なお、下にあげたのは、今回参考にした文献(鎌倉文学館の特別展パンフレット)です。
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この記事へのコメント

上ちゃん
2010年01月21日 23:49
どうも、「アドミラル」の上ちゃんです(笑)
文学とは関係ないですが、先日、衛星放送で「ブラックブック」なる映画を放送してました。
ナチスに立ち向かうレジスタンスを主人公とするサスペンスですが、切手が小道具として使われてました。
DVDが出てますので機会があったら是非。
ちょっとHなシーンもありますが♪
2010年01月24日 07:50
上ちゃん、ご無沙汰してます!

ドラマなどに切手が小道具として使われていると、思わずその時代考証なんかしたくなってしまいますね!機会があれば見てみたいです。

すでに第一部が終わったNHKドラマ「坂の上の雲」、フランス留学中の好古から真之に届く手紙にも、フランス切手(Peace and Commerce)が貼られていて、見入ってしまいました。
上ちゃん
2010年01月25日 00:31
確か、5サンチームの4枚貼だったかな?あのシーン。
つい、郵便料金あってるかな?と思いましたね♪

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