仙台と島崎藤村(2)

仙台駅前にある藤村ゆかりの場所を、続けて見て行きましょう。

平成16年、藤村が下宿した『三浦屋』の跡地が仙台駅東第二土地区画整理事業の中で藤村広場として整備されました。仙台駅東口から初恋通りを数分ほど進み、前回のブログでも紹介した塩釜神社の前を左に折れると、その藤村広場に出ます。ここには、藤村ゆかりの碑が3つ、建っていました。

まず一つ目は、「草枕」の碑です。

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「草枕」は、藤村が仙台時代の心の奇跡を自伝的に綴った長い詩で、『若菜集』に収録されています。仙台にやってきた当時、藤村はさまざまな苦悩を抱えていました。想いを寄せていた、明治女学校の教え子佐藤輔子は婚約者のもとに去り、その翌年夭折してしまいます。親友の北村透谷は藤村が仙台で暮らし始める一年前に自殺、そして、馬籠にある自身の生家は没落の一途をたどっていました。「草枕」は、仙台で新しい生活を見つけようともがく、藤村の決意表明のようにも見えます。

詩碑には、藤村の直筆で「草枕」の一節が刻まれています。

心のやどの みやぎ野よ 乱れて熱きわが身には
日かげもうすく草枯れて 荒れたる野こそうれしけれ
独りさみしきわが耳は 吹く北風を琴ときゝ
かなしみふかき吾が眼には 色無き石も花と見き
                        島崎藤村

年若き日の思い出に旧詩草枕の一節をしるす


この碑は何度か場所を変えています。最初に建てられたのは藤村がまだ健在だった昭和11年11月。藤村が第14回国際ペンクラブ大会出席のため、アルゼンチンのブエノスアイレスへ渡航する直前でした。碑を設置する場所として、当初は藤村自身が深い思い入れを抱いていた宮城野原(現在の榴岡公園周辺)が検討されましたが、その場所に陸軍第二師団歩兵第四連隊が設置されていたことから計画が変更され、詩碑は宮城野を見渡せる八木山に設置されました。

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昭和40年、八木山に動物園ができ、周辺の道路が拡張されるなど開発が進んだことから、昭和42年4月、詩碑は青葉山公園(仙台城跡)に移設されました。そして、平成16年に藤村広場が整備され、平成19年に、この碑は青葉山から藤村広場に移されたのです。平成19年9月2日には盛大な草枕詩碑移設記念式典が開かれたそうです。

さて、この「草枕」の詩碑と並ぶように、二つの碑があります。

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右側の自然石の碑には黒い石がはめ込まれ、以下のように刻まれています。

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日本近代詩発祥の地

名掛丁藤村下宿「三浦屋」跡

ここ三浦屋にありて
若き島崎藤村
日本近代詩の夜明けをつげる
『若菜集』を生む

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碑文の左下には、明治30年8月に春陽堂から刊行された『若菜集』初版本の表紙のデザインがアレンジされています。『若菜集』に収められている詩は、数篇を除いて、明治29年9月から明治30年3月にかけて「文学界」に発表されたものです。この期間は、藤村が仙台に滞在していた時期と重なりますから、『若菜集』は仙台で生まれたと言っても良いでしょう。

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この碑の左側には、さらにもう一つ、小ぶりの碑があります。

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『若菜集』に採録されている藤村の詩「潮音」が二段に分けて刻まれていました。「琴」以外すべてひらがな表記ということもあって、やわらかい印象の碑です。

わきてながるゝ
やほじほの
そこにいざよふ
うみの琴
しらべもふかし
もゝかはの
よろづのなみを
よびあつめ
ときみちくれば
うらゝかに
とほくきこゆる
はるのしほのね


海の底から沸いてくる浪の調べが、藤村には琴のように聞こえたのでしょう。うららかな春の潮の音を聞きながら、新しい人生の旅立ちを意識していたのかもしれません。

実はこの藤村広場周辺を訪問したのは、2011年2月24日。東日本大震災が発生する三週間ほど前でしたので、震災でこの一帯が影響を受けていないのか、少し気になるところです。

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  • 藤村広場   2 (仙台市 宮城野区)

    Excerpt:  東京の明治女学校高等科で英語科教師をしていた藤村、島崎春樹。東北学院の招きもあり仙台へ赴き、同校で教鞭をとったのは明治29年。    教え子との恋に破れ(その数年後に病没、永遠の別離となった.. Weblog: Anthony's CAFE  racked: 2011-11-03 00:36